忍者通訳の記録帖

気配の通訳・翻訳所。空気、沈黙、すれ違い、視点の跳躍──そしてたまに、自分自身。精度はいつも道の途中。  

2025-07-13から1日間の記事一覧

#357 第7話 魂の片割れを探して

与沢翼さんが、YouTubeやSNSで「友達がいない」と言っていた。それを聞いて、ふと、昔の自分のことを思い出した。 高校を出て、知らない街で暮らしはじめた頃。慣れない学校に通いながら、たまに一緒に過ごす人はいたけれど、心はどこか遠かった。そんなある…

#356 第6話 魂がふるえるとき──箕輪厚介と与沢翼を見ながら、私が感じたこと

YouTubeで、箕輪厚介さんと与沢翼さんが語り合う動画を見た。 「絶望から帰還」と題されたその対談は、思っていたよりもずっと静かで、やさしかった。 言葉が丁寧に選ばれていて、ふたりのあいだに流れる“呼吸のような間”にも、どこかぬくもりがあった。 印…

#355 ワックスをかけて、ルンバをためらった日

外壁と屋根の塗装をお願いしたときのこと。せっかく来てもらったので、ついでに家の中もちょっと見てもらったら、塗装の職人さんが「床、普通のワックス、どこでもあるやつで、えっから」って教えてくれた。 ああ、昔はそういえば、ちゃんとやってたなって思…

#354 考えすぎの私へ──もう、大丈夫だよ

もう「考えすぎじゃない?」って、誰にも言われなくなった。それはたぶん、私がそう言わせない空気を持つようになったから。きっと、私の中に、誰にも踏み込ませない何かができたんだと思う。 でも、ふとしたときに思うんだ。 「私は、ちゃんと大丈夫なんだ…

#353 深海の本が、わたしを見つめていた

とくに目的があったわけではない。本を探していたわけでもなかった。けれど、平積みされたビジネス書の一角には、なぜかいつも立ち寄ってしまう。そこには、いつも通りのことばたちが並んでいた。まっすぐで、鋭くて、外の世界を測るための言葉たち。 その中…

#352 ワークマン男子はなぜ無印にいないのか──やさしげ男子だけが馴染む空気

無印良品の店に行くたび、なんとも言えない静けさに包まれる。 棚に並ぶのは、色彩を抑えた商品たち。流れる音楽は小さく、スタッフの声も穏やかで、店内の空気そのものがやわらかい。 そして気がつくと、そこに立っている若い男性たちのことを、つい目で追…

#351 無印良品と繊細な男子──雰囲気を売る空間で

無印のお店に行った。株主優待の7%割引券を、このままだと使いそびれそうだったから。せっかくなら、と店の様子も見ておこうと思った。 日曜の午前中。混んでいるかと思いきや、意外と静かだった。客層も、思っていたより幅広い。若い女性が多いかと思えば、…

#350 第5話. 透明化された魂は、いつも孤立する──与沢翼とモーパッサン『脂肪の塊』の娼婦に見る、高潔さの行き着く先

──与沢翼と『脂肪の塊』の娼婦に見る、高潔さの行き着く先 彼はそれを「透明化」と呼んだ。与沢翼──かつて「秒速で1億稼ぐ男」として世間を騒がせた男が、今、その栄光の残骸とともに語るものは、「全てをさらけ出す」という生き方だ。 それは単なる暴露でも…

#349 第4話 正常と異常の境界で──チェーホフ『六号病棟』と与沢翼の2025年4月からの記録

ロシアの文豪、チェーホフの短編小説『六号病棟』には、現代を生きる私たちにも鮮烈な問いを投げかけてくる構造がある。それは「正常」と「異常」の境界が、いかに脆く、あやふやなものかという問題だ。 主人公はラーギンという医者。彼は田舎の病院で働く医…

#348 【枝豆さん物語】 第1話「出てこなかったけれど」🌱

この場所にはね、ぼくが最後にまいた枝豆さんがいるんだ。6月の終わり、土もあたたかくて、きっと元気に出てくるって思ってた。でも──1日、2日、3日……7日、10日、2週間たっても、だれも顔を出してくれなかったんだ。土の中で迷っていたのかな。夜が冷たすぎ…