忍者通訳の記録帖

気配の通訳・翻訳所。空気、沈黙、すれ違い、視点の跳躍──そしてたまに、自分自身。精度はいつも道の途中。  

#2549 記憶の庭

遠い日のことを
ふと思い出す。

忘れてしまったことも
たくさんある。

それでも
残っている風景がある。

誰かの声。
午後の光。
いつか歩いた道。

思い出すたびに
少しずつ姿を変えながら
私の中で育っている。

忘れたもののあいだにも
何かが芽吹いている。

今日もまた
ひとつの時間が
静かに根をおろす。

 

#2547 古い本

古い本を開く。

少し黄ばんだページ。
紙の匂い。

巻末に
小さな文字で
名前と日付、
書店の名。

若い日の誰かが
ここに文字を残した。

どんな街を歩き、
どんな思いで
この本を手にしたのだろう。

ページをめくる。

遠い日の時間が
静かに流れている。

窓から
午後の光が差している。

 

#2544 Among the Trees

Evening.

Beneath the tall trees,
children run.

Their laughter
mingles with the breeze.

A little way off,
I stand quietly.

Ten years ago,
children played here too.

The trees
have kept growing
all these years.

A breeze passes.

I look up.

Between the branches,
the evening sky.

In the distance,
children's voices again.