忍者通訳の記録帖

気配の通訳・翻訳所。空気、沈黙、すれ違い、視点の跳躍──そしてたまに、自分自身。精度はいつも道の途中。  

2025-09-01から1ヶ月間の記事一覧

#821🌊 川の流れとわたしのかたち

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖(すみか)と、またかくのごとし」 ――鴨長明『方丈記』は、仏教的な無常観を端的に描き出す。すべて…

#820✈️ 免税制度の光と影──大手家電量販店のレジから2025年の2000億円問題まで

2018年のある日。大手家電量販店の売り場で、私は自分が担当する商品の荷物をレジに運びながら、その先で繰り広げられる光景を脇から眺めていました。 レジ前には長い長い列。特に中国から来た観光客が多く、両手いっぱいに化粧品や小型家電を抱え、ときには…

#819🕊 死後のかたちが移ろうなかで

ここ十数年、「樹木葬」という言葉を新聞や雑誌で目にすることが増えた。最近では市の広報にも「樹木葬しませんか」という広告が載るようになり、街のあちこちで目に留まる。 木の写真とともに「ここで穏やかに眠る」というイメージを提示されると、死後のあ…

#818🏭🌞 DNAと酵素と光合成 ― 体の中の工場のお話

「植物の体は炭水化物でできている」って聞いたことありますか?葉っぱも茎も根っこも、基本の材料は炭水化物。まるで「建物」や「工場」の壁や柱のようなものです。 でも工場って、建物だけあっても動きませんよね。工場を動かすには、設計図・職人・エネル…

#817🩺 テルモの控えめな配当に隠された真実:日米で違う『守り』と『攻め』の企業文化

テルモ という会社をご存じでしょうか。 家庭用では、ドラッグストアで見かける「電子体温計️」や「血圧計」でなじみがあるかもしれません。 けれども本業はむしろ、 病院向けの医療機器 です。心臓カテーテルや透析装置など、命を支える現場で使われる製品…

#816🌱🫘 インゲンは空気から、人間は食べ物から

空気の中ってなにでできてる? 空気の大部分は「窒素」なんです。割合は―― 約78%が窒素(N₂) 約21%が酸素(O₂) ほんの少しが二酸化炭素(CO₂)など でも人間は空気の中の窒素を使えない! 人間は、呼吸をする時、酸素を使って二酸化炭素を出しますが、…

#815🔊 純正パーツに替えてみた――音とブラシとフィルターのリアルな違い ✨

前回の記事([#793 消耗品の宿命――ルンバi2と純正・互換パーツをめぐる記録 ✨])では、ルンバの消耗品(ゴムローラー・サイドブラシ・フィルター)を互換品に替えて使ってみたときのことを書きました。「パーツを交換しながら使い続けることは、アメリカ的合…

#814🧪👋 「分子」ってなに? ― おててでつながる小さな世界

みなさん、「H₂O」とか「CO₂」って書かれているのを見たことはありますか?教科書やノートに出てくるとき、線でつながって描かれていたりしますよね。 たとえば水(H₂O)はこんなふう H — O — H 二酸化炭素(CO₂)はこんなふう O = C = O 線は「おてて」の…

#813🌱🫘 命の贈り物: マメ科のインゲンが残してくれた「ふかふかの土」の科学

導入:インゲンが残した「プレゼント」 今日、畑のインゲンを抜きました。葉っぱも茎もなくなったあとに残ったのは、黒くてやわらかい、ふかふかの土。 手で触ると気持ちよく、まるでインゲンが命をかけて「プレゼント」を残していったように思えました。 …

#812📱「iCloudのストレージ」と「iPadのストレージ」──詐欺メールから学んだ本当の違い

ある日、iCloud 宛にこんなメールが届きました「あなたは 200GB のプランを契約中で、残り容量は 13.6GB です。6か月無料で 2TB にアップグレードできます」 一瞬「えっ、そんな契約してた?」と不安に。iCloud宛に来ていたので一瞬本物っぽく見えたけれど、…

#811📜 歴史は韻を踏む──ハリウッドの赤狩りからTikTok規制まで 🎬📱

最近のニュースで、トランプ大統領が TikTokの米国事業を売却させる方針に署名 したと報じられました。TikTokは中国企業のByteDanceが持っていて、アメリカでは 1億人以上の人々が毎日楽しみ、発信し、ビジネスにも活用 しています ️。 しかし問題になった…

#810🐕境界と無頓着のあいだで 🐾

朝の畑。なすの葉を摘んでいた。その指先には、 まだ夜の冷たさが残る。 ふと、トコトコトコ…… 小さな足音。私が立ち上がった瞬間――朝の光がひろがり、白いゆったりとした服の女性が、 静かに姿を現した。 ためらいの、一瞬。私が急に立ち上がったことへの、…

#809🪞 国勢調査 ―― 心の鏡に映る自分

今年も国勢調査の時期がやってきて、封筒がポストに入っているのを見たとき、ふと昔のことを思い出した。それはずいぶん前、以前の国勢調査のときの出来事だ。 玄関に現れた調査員のおじさんは、身長が低く、細身で、飾り気のない服装。いかにも田舎のおっさ…

#808 ポストに「ガサゴソ」、国勢調査からの小さな発見 📮✨

午後の「ガサゴソ」 数日前の午後、ポストから「ガサゴソ」という音がした。見てみると、国勢調査の封筒が入っていた。「あっ、そうか、今回は手渡しじゃないんだ」――そう思った。 以前は調査員さんが直接来て「ここは何人世帯ですか?」とぶっきらぼうに聞…

#807🌀解約しづらいデザインは誰のため?AmazonとVoicyから見えるサブスクの現実

アメリカで大きなニュースがありました。Amazonが**米連邦取引委員会(FTC、日本の公正取引委員会にあたる機関)**と和解し、**25億ドル(約3800億円)**を支払うことになったのです。この和解金のうち、約15億ドル(約2300億円)は3500万人のユーザーへの返…

#806 冷やされた白と黒のお弁当箱たち 🍃📡

ひんやりとした風が静かに流れ込む。 白い箱、黒い箱。ルーターも、ゲートウェイも、ONUも、熱をためていた身体をゆるめて、「ありがとう、気持ちいいよ」小さな声がする。 その手前にはKindle、iPadたち、スマートフォンたち。「ここ、気持ちいいね」「うん…

#805💡税金を払うということ──『痛み』から『感謝』へ 🌱

固定資産税のように、ある程度まとまったお金を支払うとき、多くの人は少なからず「痛いな…」と感じると思います。私もその一人でした。でも最近、考え方が少し変わるきっかけがありました。 「お金は感謝を表す」という視点 経済コラムニスト・金融経済ア…

#804💻税金払いの新しいカタチ ✨ au PAYで体験してみた

毎年やってくる固定資産税。昨年から自分の自治体でも au PAY 請求書払い が利用できるようになり、実際に試してみました。大きな魅力はやはり 手数料が無料 なことです。 クレジットカードチャージから銀行チャージへ ふだんは au PAY を使っていないので、…

#803🍞暗記パンとAI宿題ボタン ― 考える力をどう育てるか 🤖

ドラえもんの「暗記パン」を知っていますか? ノートの文字を食パンに写して、そのパンを食べると丸ごと暗記できるというひみつ道具です。でものび太は食べすぎてお腹いっぱいになり、結局うまくいかなかったというオチがありました。 最近、この暗記パンを…

#802🎀🏯竜宮城からの贈り物 🐚✨

美容サロンの世界は、まるで竜宮城のようだ。主役は何十万円もするフェイシャルスチーマー。「これを使えば肌が柔らかくなり、自分が変われる」——そう信じるストーリーが人を惹きつける。 この世界への入口となるのが、1個1,000円以上する美しい箱入りの石鹸…

#801🎥 透明化の人間性──与沢翼に寄せて

人間性って、なんだろう? ある日、私のブログにこんなコメントが届いた。作品と人間性が乖離していることについて、「そもそも優れた人間性とは何なのか」 この問いが、私の中に静かに沈んだ。今回は小説家や芸術家ではなく、現代を生きる一人の人物──与沢…

#800🌘矛盾を抱える人間性──村上春樹『独立器官』に寄せて

人間性って、なんだろう? ある日、私のブログにこんなコメントが届いた。作品と人間性が乖離していることについて、「そもそも優れた人間性とは何なのか」 この問いが、私の中に静かに沈んだ。人間には、「わかってほしい」と願う承認欲求と、「わかってほ…

🍋 #799 やさしさのかたち──『ライオンのおやつ』と人間性について

人間性って、なんだろう? ある日、私のブログにこんなコメントが届いた。作品と人間性が乖離していることについて、「そもそも優れた人間性とは何なのか」 この問いが、私の中に静かに沈んだ。 人間性は「共感」や「配慮」のことだろうか。それとも、もっと…

#798🏠📦 置き配とオートロック、それぞれの現実

1. ニュースを読んで思ったこと 先日、「国が宅配業者にオートロックを解錠できる仕組みを支援する」というニュースを目にしました。なるほど、便利さと安全性の両立がテーマらしい。 でも正直なところ、私はすぐにこう思いました。「え、オートロック付き…

#797 石鹸に託された、美しい物語 🌿✨🕊️

高級美容サロンの方から、思いがけず石鹸をいただいた。箱は落ち着いたグレーに、流れるようなロゴが静かに浮かんでいる。光沢を抑えたマットな箱の質感は、触れるだけで「これは特別なもの」と思わせる。さらに「環境に配慮した素材を使っています」と小さ…

#796 魂の二律背反──わかってほしいのに、わかってほしくないエゴン・シーレに寄せて

若くして世界と衝突した魂 エゴン・シーレは、20世紀初頭のウィーンで活躍した画家だ。28歳で夭逝(ようせつ:特別な才能を持つ人が早く亡くなること)するまでに、数多くの自画像、裸体画、女性像を残した。 彼の絵は、しばしば**「不快」とすら評される**…

#795❄️確かめるすべもないままに

「彼はね、浮気してたの」 そう彼女は言った。何の前触れもなく、車の中でぽつりと。その声には確信があり、悲しみがあった。 数年前に亡くなった夫のことだった。詳しく聞いたわけではないけれど、彼女はこう続けた。 ある日、会社から電話がかかってきて、…

#794🌿美しい言葉を書く人の、あまりに粗野な言動

少し前、ある女性の作品を読んだ。文章はとてもやわらかく、どこか透明で、気配のようなものに満ちていた。空白を編んで、ふわっとした余韻を残す。まるで、冬の雪国の空気の中に溶けてしまいそうな、儚い詩のような文章だった。 その人が人生の後半に差し掛…

#793🌀 消耗品の宿命――ルンバi2と純正・互換パーツをめぐる記録 ✨

掃除ロボット・ルンバは便利ですが、使っていると必ずやってくるのが「消耗品の交換」。ルンバi2の場合、交換対象は大きく分けて次の3つです。 ゴムローラー(正式名称:デュアルマルチサーフェスブラシ) 緑(濃い緑と黄緑)の2本セットで、床のゴミをかき…

#792🌸 お姉さん、聞こえる?──秋のなすちゃん🍂🍆

さむいね…風がふくたび、体の奥まで冷たさが入り込む。 お姉さん、聞こえる?✨わたしの花は、まだ咲いてるのに、ひとつ、またひとつ、落ちてしまうの。「どうして?」って思うけど、もう答えは知ってる。秋が来たんだよね。 実は小さいまま。もっと大きくな…