忍者通訳の記録帖

気配の通訳・翻訳所。空気、沈黙、すれ違い、視点の跳躍──そしてたまに、自分自身。精度はいつも道の途中。  

2025-06-17から1日間の記事一覧

#156 介護がつらかったあの時の私へ──そして今書いてるあなたへ

あるブログを、読んだ。介護について書かれていた。「介護は美談じゃない」──そんなふうな内容だったと思う。 その人は、祖父母と両親と暮らしているらしい。フルタイムで働きながら、家族の介護にも関わっている。 もしかしたら、日々の投稿数を自分の中で…

#155 愛しき、過剰なメガネ──ピュティフィと自分の脳内会議

YouTubeアニメ『ピュティフィ』を見ていて、あるキャラクターにやけに引かれるなと思った。 それが“八芽っち”。自称「量産型メガネのコミュ障オタク」。最初はただ面白いキャラだと思っていたけれど、気づいたら「これ、自分じゃん」と思っていた。 この黒髪…

#154 YouTubeアニメ『ピュティフィ』仲間は解答仲間?──“見た目”から世界が狂い始める瞬間

YouTubeアニメ『ピュティフィ』は、短い尺の中に言葉と言葉のズレ、 人と人の誤解、そして価値観の裏返しを詰め込んだ知的コント作品だ。 とくに2025年6月16日配信回「コンビニ強盗の見た目がオタクすぎて共犯だと勘違いされました」は、 “あるある”を突き抜…

#153 手袋の記憶、花の気配

ある日、ひとつの手袋を見て、ふと立ち止まった。それは、母が夏の陽ざしを避けるために使っていた、日よけ用の手袋だった。 淡くやわらかなクリーム色。袖口には、波のように揺れる上品なフリル。茶色の糸で小さな花が三つ、そっと刺繍されている。 まるで…

#152 ゆく庭の流れは絶えずして──解体された風景と『方丈記』

ある朝、家のかたちだけが残されていた。外壁は整っていて、屋根もきちんとあった。けれど、窓の奥に広がる部屋の中は、何もない空洞だった。 ああ、これはきっと、中を作り直して、また暮らしが戻ってくるのだろう──そう思って、しばらく見守っていた。 庭…

#151 🌍レアアースはどこで生まれているのか──知らないまま生きていた私たち

レアアースのニュースを読んだ。「中国が輸出規制を強めるかもしれない」とか、「米中対立の中で武器化されている」とか。正直、最初はよくわからなかった。レアアース? それって中国にしかないの? なんでそんなに大事なの? 「レア」ってついてるから、な…

#150 モヤモヤの地図──中国とその“周辺”にいる人たちのことを、いったん整理してみた

レアアースのことを調べていたら、どうしても引っかかる言葉があった。「中国の周縁部で、少数民族が劣悪な環境で働かされている」──そんな一文だったと思う。ウイグル? チベット? モンゴル? それって国なの? 中国なの?「内モンゴル」は中国の中らしい…

#149 私は警察に届けなかった──2020年、クレジットカード不正利用との静かな闘い

2025年6月。ニュースでこんな見出しを見かけた。「クレジットカード不正利用、警察への情報提供が“本人同意不要”に」。 ECサイトやカード会社が、ユーザー本人の同意を得なくても、不審な取引について警察に情報を提供できるようになるという。 それを読んだ…

#148 🌐ことばを失った日──沈黙という抵抗 第11話 最終章

「あの日、彼女は一言も話さなかった。」 学校が爆撃で崩れた日、避難所にいた少女はずっと黙っていた。医師が話しかけても、ボランティアが歌を歌っても、彼女は何も語らなかった。 けれど、その沈黙は空白ではなかった。むしろ、あらゆる言葉よりも雄弁だ…

#147🌐すれ違う地図──正しさが通じない場所で 第10話

見えているのに、すれ違う。 ある国では、「正義の戦い」として報じられた。別の国では、「残虐な侵略」として非難された。同じ出来事なのに、まるで別の物語を語っているようだった。 ニュースを見て、私は混乱した。いったい、どちらが「正しい」のか。で…

#146🌐世界は彼らをどう見ているのか──ニュースにならない目線の話 第9話

ある日の夜、テレビに映ったのは、破壊された建物と泣き叫ぶ子ども。「またガザか……」と、思わずつぶやいた自分がいた。その瞬間、私は画面の外にいた。何も感じないわけではない。けれど、その映像を"ただ見るだけ"の立場にいることを、どこかで分かってい…

#145 🌐壁のむこうへ──自由を求める10代の決断 第8話

ガザは、パレスチナの人びとが暮らす小さな沿岸の地。高い塀と検問所に囲まれ、自由な出入りは許されていない。イスラエルやエジプトに隣接しながらも、そこから「出る」ことは、たやすくない。海がある。でも、空も陸も閉じている。子どもたちは、その閉じ…

#144 🌐壁の中の生活──ガザという“部屋”に住む人々 第7話

「世界でいちばん大きな“部屋”って、どこだと思う?」 そう聞かれて、きみはどこを思い浮かべるだろう。ビル? ドーム球場? それとも、お城? でも実は、中東にある小さな土地「ガザ」が、世界でいちばん“大きな部屋”かもしれない。 海に面しているのに、出…