企業の仕組みを調べていると、ERPという言葉に行き当たる。
人事、会計、販売、在庫、給与。
企業の事務をまとめて動かすための仕組みだ。
最初は、企業のためのシステムだと思っていた。
けれど少し視線を外に向けると、
それは企業の話ではなく、社会の話に見えてくる。
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歯医者を考えてみる。
診療室には椅子が並び、
患者が順番に案内される。
その裏では、
予約の管理、材料の在庫、診療報酬の請求、
スタッフの勤怠と給与が動いている。
静かな手作業の治療の裏で、
小さな工場のような事務が回っている。
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学校も同じだった。
授業が行われ、
生徒が学び、
先生が教えている。
けれどその裏では、
先生の給与、教材の発注、
校舎の修繕、研究費の管理が処理されている。
教育の現場は教室にあるが、
学校という組織は会計と人事で動いている。
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コンビニのレジも、
ただ商品を売っているわけではない。
レジを通ると、
商品は数字になり、在庫が更新され、
次の発注と配送が決まる。
小さなレジの操作が、
物流を動かしている。
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スーパーでは、
三万種類を超える商品が並んでいる。
青果、精肉、鮮魚、惣菜。
それぞれに原価があり、
仕入れがあり、
売れ残れば廃棄が出る。
店頭の賑わいの裏で、
膨大な数字が静かに整理されている。
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外食チェーンでは、
一杯の牛丼の裏に原価表がある。
肉、米、玉ねぎ、タレ。
材料は中央の工場で処理され、
各店舗に配送され、
来客数に合わせてスタッフが配置される。
厨房は料理の場所だが、
チェーン全体は巨大な計算の上に成り立っている。
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社会は、派手な技術だけで動いているわけではない。
レジの数字、
給与の計算、
在庫の一覧、
静かな事務の積み重ね。
それらが止まれば、
店も、学校も、医院も、すぐに動かなくなる。
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社会の表には、
商品やサービスが並んでいる。
けれどその裏側には、
数字を流し続ける、見えない血管がある。
ERPという言葉は、
その血管に、名前をつけただけなのかもしれない。