忍者通訳の記録帖

気配の通訳・翻訳所。空気、沈黙、すれ違い、視点の跳躍──そしてたまに、自分自身。精度はいつも道の途中。  

#394 なぜ今、原発を作り始めるのか──“止めない文明”の話

 

原発って、もう終わった話だと思っていた。
でも、今日のニュースで関西電力が「これから新しい原発を作る」と聞いて、思わず「え?」と声が出た。
しかもそれは、2040年代に稼働させるための計画らしい。

今さら原発? いまはもう、太陽光とか風力とか、CO2を出さない「再生可能エネルギー」の時代なんじゃないの?
そう思っていたから、余計にひっかかった。

でもよく読んでみると、話はそんなに単純じゃなかった。

今回の原発建設は、実際に稼働するのはおそらく20年後。
つまり、今すぐのためではなく、“未来のために準備を始める”ということだった。
そして、これは2011年の福島第一原発の事故以来、日本で初めての「新しい原発を作る」という動きだという。

私は原発に対して、正直ネガティブなイメージを持っていた。
事故の記憶もあるし、放射性廃棄物の問題もある。
一度何か起これば取り返しがつかない。だから、できることなら減らしていくべきだと思っていた。

でも、「電気が止まったらどうなるか」を考えたとき、話が少し違って見えてきた。

冷蔵庫が止まる。
病院も止まる。
トラックも飛行機も動かなくなる。
水道も、通信も、暖房も、買い物も……。

電気がなければ、今の生活は成り立たない。

私たちは、ものすごく“電気に依存した文明”の上に生きているんだと改めて思った。
だから、電気を絶対に止めないための電源──それを「ベースロード電源」と呼ぶのだという。
原発もそのひとつで、安定して大量の電気をつくり続けることができる。

もちろん理想は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで全部まかなえること。
だけど、太陽は夜には沈むし、風もいつも吹いてくれるわけじゃない。
発電できるタイミングが不安定なエネルギーでは、「止められない電気」を支えるのがまだ難しい。

それを補うためには、「電気をためておく」技術、つまり蓄電池が必要になる。
そして、たとえば家庭どうしで電気を融通しあえるようなネットワーク、スマートグリッド(かしこく電気をやりとりできる次世代の送電網)という仕組みも欠かせない。
昼間に太陽光で電気をつくったおうちが、近所のおうちに「わけてあげる」。
そんなP2P(ピア・トゥ・ピア)エネルギー取引という考え方もあるらしい。

それってなんだか、未来っぽくてやさしい感じがする。
でも現実はまだ、そこにたどり着く途中だ。
家庭用の蓄電池は高価だし、グリッド(電気を送るための道、送電網)を整備するにも時間がかかる。
だからこそ今は、火力発電や原子力といった「止めない電気」に支えられているのが実情なんだと思う。

原発を新しく作ることに、賛成か反対かは簡単には言えない。
でも、このニュースをきっかけに「電気ってなに?」「生活ってなに?」と考える時間ができたのは、きっと良かったんじゃないかと思う。

私たちは、電気のうえに文明をつくっている。
そしてそれは、ゆっくりとしか変わっていかないものなんだなと、静かに思った。