ダライ・ラマ14世が、今年90歳を迎えた。
そのニュースと一緒に流れてきたのが、アメリカ国務省の声明だった。
「チベットの人々が、干渉なく宗教指導者を選び、崇拝する自由を支援する」
……と。
正直、最初にこのニュースを見たとき、こう思った。
「え、なんでここでアメリカが出てくるの?」
中国とチベットの対立が長年続いているのは知っていた。 チベットの人たちが中国政府に弾圧されているとか、 ダライ・ラマが転生して少年に生まれ変わるとか、 でも中国政府がそれを許さないとか——。
そういう話は、なんとなく聞いたことがあった。 でも「アメリカ政府が声明を出す」っていうのは、正直、どうしてそこまで?という違和感があった。
だから少しだけ、調べてみた。
そしたら、その裏には思った以上に深い構造があった。
表の理由は「人権」「宗教の自由」
アメリカは建前として、こう言う。
- 宗教の自由を守るため
- 民族の自決を応援するため
- 平和と非暴力を体現するダライ・ラマを尊重するため
たしかにダライ・ラマ14世は、ノーベル平和賞も受賞していて、 欧米では「慈悲」や「愛」の象徴として、多くの人に尊敬されている。
そういう人を、「政府の許可なしでは転生できない」と言って 抑え込もうとする中国のやり方は、たしかに疑問がある。 アメリカが「それはおかしい」と言いたくなる気持ちも、わかる。
でも、その裏にはもっと大きな思想がある
実はこれは単なる宗教や人権の話じゃない。 もっと大きな、地政学的なパワーゲームが背後にある。
中国は今、どんどん大きくなっている。
- 経済的にも
- 軍事的にも
- 政治的にも
チベット、ウイグル、香港、台湾、南シナ海、尖閣諸島…… 周辺の国々との摩擦が絶えない。
そして、アメリカとの経済対立は2018年ごろから明らかに激化していて、 米中の覇権争いは、もうごまかしようがない。
ダライ・ラマは「語りの戦場」になった
ここで見えてきたのは、ナラティブ(語り)の戦争という構図。
- アメリカは「自由や人権を守る正義の国」として振る舞いたい。
- そして中国を「宗教や人権を抑圧する国」として国際的に見せたい。
その時に、ダライ・ラマという「平和の象徴」は政治的駆け引きの中で、すごく都合の良いコマなんだね。
だから、
「その人をコントロールしようとする中国は悪」
「その人を守ろうとするアメリカは正義」
——という物語を描こうとしている。 逆に言えば、中国から見れば「アメリカこそが干渉してくる加害者」だ、という構図にもなる。
見えない戦争をみつける覚醒
私は、最初にただ「なんでアメリカが出てくるの?」と思っただけだった。
でも調べてみると、
これはただのダライ・ラマの話じゃなくて、
中国とアメリカの世界的な心理戦、印象戦の一部だった。
もちろん、ダライ・ラマの歴史や、チベットと中国の関係はもっともっと深い。 今回はあくまで「アメリカがなぜ出てくるのか」という疑問に絞って書いた。
自分でもう少し勉強したくなったら、また続きを書いてみようと思う。たぶん、つづく…