忍者通訳の記録帖

気配の通訳・翻訳所。空気、沈黙、すれ違い、視点の跳躍──そしてたまに、自分自身。精度はいつも道の途中。  

#293✨第1章 日本の素人が考えた:なぜアメリカがダライ・ラマに口を出すの?

ダライ・ラマ14世が、今年90歳を迎えた。

そのニュースと一緒に流れてきたのが、アメリ国務省の声明だった。

チベットの人々が、干渉なく宗教指導者を選び、崇拝する自由を支援する」

……と。

正直、最初にこのニュースを見たとき、こう思った。

「え、なんでここでアメリカが出てくるの?」

中国とチベットの対立が長年続いているのは知っていた。 チベットの人たちが中国政府に弾圧されているとか、 ダライ・ラマが転生して少年に生まれ変わるとか、 でも中国政府がそれを許さないとか——。

そういう話は、なんとなく聞いたことがあった。 でも「アメリカ政府が声明を出す」っていうのは、正直、どうしてそこまで?という違和感があった。

だから少しだけ、調べてみた。
そしたら、その裏には思った以上に深い構造があった。

表の理由は「人権」「宗教の自由」

アメリカは建前として、こう言う。

  • 宗教の自由を守るため
  • 民族の自決を応援するため
  • 平和と非暴力を体現するダライ・ラマを尊重するため

たしかにダライ・ラマ14世は、ノーベル平和賞も受賞していて、 欧米では「慈悲」や「愛」の象徴として、多くの人に尊敬されている。

そういう人を、「政府の許可なしでは転生できない」と言って 抑え込もうとする中国のやり方は、たしかに疑問がある。 アメリカが「それはおかしい」と言いたくなる気持ちも、わかる。

でも、その裏にはもっと大きな思想がある

実はこれは単なる宗教や人権の話じゃない。 もっと大きな、地政学的なパワーゲームが背後にある。

中国は今、どんどん大きくなっている。

  • 経済的にも
  • 軍事的にも
  • 政治的にも

チベットウイグル、香港、台湾、南シナ海尖閣諸島…… 周辺の国々との摩擦が絶えない。

そして、アメリカとの経済対立は2018年ごろから明らかに激化していて、 米中の覇権争いは、もうごまかしようがない。

ダライ・ラマは「語りの戦場」になった

ここで見えてきたのは、ナラティブ(語り)の戦争という構図。

  • アメリカは「自由や人権を守る正義の国」として振る舞いたい。
  • そして中国を「宗教や人権を抑圧する国」として国際的に見せたい。

その時に、ダライ・ラマという「平和の象徴」は政治的駆け引きの中で、すごく都合の良いコマなんだね。

だから、

「その人をコントロールしようとする中国は悪」
「その人を守ろうとするアメリカは正義」

——という物語を描こうとしている。 逆に言えば、中国から見れば「アメリカこそが干渉してくる加害者」だ、という構図にもなる。

見えない戦争をみつける覚醒

私は、最初にただ「なんでアメリカが出てくるの?」と思っただけだった。

でも調べてみると、
これはただのダライ・ラマの話じゃなくて、
中国とアメリカの世界的な心理戦、印象戦の一部だった

もちろん、ダライ・ラマの歴史や、チベットと中国の関係はもっともっと深い。 今回はあくまで「アメリカがなぜ出てくるのか」という疑問に絞って書いた。

自分でもう少し勉強したくなったら、また続きを書いてみようと思う。たぶん、つづく…